日々の出来事を中心に、色々なことを書いていくつもりです。
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2009年06月08日 (月) | 編集 |

「今回は私の一人語りにでも付き合ってもらいたい」

薄暗い室内、安楽椅子に座った老紳士はそう言った。
彼の膝の上に置かれたのは一冊の古びた本。

「なに、ちょっとした昔話のようなものさ。そう、かつて神殺しの竜王を屠り、果てには1012の魔王が一柱……それも、第五位という高位の魔王さえ退けた、ある英雄の物語だ」

老紳士はただ一人、語り続ける。
そう、それこそが彼の役割。彼は語ることこそを使命とし、それ以外のことはなにもしない。
彼はただの語り手。それ以上でも、それ以下でもない。
ただ静かに、ある真実を語るのみ。

「その英雄――シンキと呼ばれし青年は、戦いの後、しばらくの間はヘルフェンティア王国にその身を置いていた。その際だが、彼の傍にはよく二人の女性の姿があったらしい。いやはや、なんとも羨ましいことであるな」

老紳士はおどけたように肩をすくめてみせる。
語ることこそを使命とする彼が話の合間に見せる仕草もまた、語りを聞き手に楽しくみせるために必要なこと。これらもまた、彼の"語り"という使命の一環なのだ。

「おっと話の腰を折ってしまった。さて、そんなわけで英雄と呼ばれた青年、シンキはそんなわけで王国のために自らの刃を振るった。しかし……しかしだね、遍く生命が無駄に散ることをよしとしない彼は、戦いの中で散っていく命を前にして、次第に闇を増幅させていった」

今度は妙に真剣な顔つきになる。
こういう時の彼はふざけることを嫌う。語りもまた然り。

「人間と呼ばれし、彼らが無意識のうちに恐れているものとは……そう、それは己自身と私は思っているよ。そして、それを乗り越えるべきことこそが、人間にとって最大の試練。彼もまた、その試練に立ち向かう時が来たのだよ」

老紳士が腕を大きく振るう。
そうした瞬間、周囲の闇が消え、別の風景が生み出される。
夜空に満月の浮かぶ平原。そこでシンキと呼ばれし青年は、自らの闇と対峙していた。
しかし、それは現実ではなく、虚構。
映し出されているものは現実であるが、その内容は過去のもの。

「彼、英雄シンキの闇とは己が抱く理想とそれによる矛盾。そして、遠い過去に背負った業そのもの」

シンキの闇は、彼とよく似た姿をしていた。いや、瓜二つといってもよい。
当たり前だ。自身の闇なのだから、姿が似ているのは。

「この舞台を用意したのは一体の悪魔とも、魔王とも言われているが、その真実は定かではない。そして、それは私の語るべきところではない。……話をもどそうか」

彼は曖昧なことは"真実"として語らない。
実際、この事件を起こしたのが誰なのかは誰も知らない。
いや、そもそも本当に誰かが引き起こしたものなのかさえ不明なのだから。

「英雄と、その英雄の闇の戦いは熾烈を極めた。力の差などなく、互角なのだから必然といえばそうだが……たとえシンキ本人の力が上回っていようと、闇には勝てない。闇に勝つ方法はただ一つだ。そう、それはね……」

『俺は、もう逃げない』

周囲の背景で戦っていたシンキが刀を収め、そう言った。
それこそが答えである。

「そうだ、闇とは自分自身だ。自分の弱き部分だ。それを乗り越えること――すなわち、自分の弱さを受け入れ、共存するということに他ならない」

『俺は忘れない。俺が奪ってしまった者たちのこと、守れなかった者たちのこと、奪ったものたちのこと、守れた者たちのこと。そして――俺自身を忘れない』

「彼の人生は幸福と不幸の連続だ。生きる者ならば当り前のことだが、彼のは時には見るにたえない。それでも、彼は自身の弱さと向かい合うことができた。これだけは否定のできない真実だ」

『それと……もう、逃げたくないからな』

「自身を乗り越えること――それと同時に、彼は一つの約束を思い出し、一つの答えを出した」

『あいつを、リーゼを守ってやりたいんだ。わかってる、これはトゥーレイアを傷つける答えだってことくらい……でも、それでも俺はリーゼの傍にいてやりたい。あいつ、強いふりして、けっこうさびしがり屋なんだ。一人にはできない』

「……人を愛するというのは難しいことだよ。誰かを愛せば、きっと誰かが傷つく。それがわかっているから、彼も長く答えを出せなかったのかもしれない。けれど、彼はようやく答えを出した」

『ディズのやつとも約束したしな。だから、俺はリーゼと一緒に歩むよ。誰がなんといおうと、俺はリーゼだけを愛する』

「ふむ……なかなかお熱いものだ。しかし、時間もないことだ、ここいらにしておこうか」

老紳士は、今度は指を鳴らす。
すると、周囲の風景は消え、元の暗闇が戻ってくる。

「この後すぐに、彼はヘルフェンティア王国より姿を消したよ。もちろん、それには愛すると決めた女性も一緒だそうだ。王国では大問題になったがね……英雄が消えたと」

そこまで言って、老紳士は多く息を吸う。

「けれど……よく考えてほしい。彼は、本当に英雄であることを望んだかい? 単純に、彼は助けると決めた者のために刃を振るっただけだ。たまたま、それが神殺しの竜王であり、第五位の魔王だったにすぎない」

老紳士の言うことは理解できる。
しかし、おかしい。この老紳士は"真実"を語ることこそを"使命"としているが、この語りにはどこか彼自身の憶測が交じっている。

「英雄という肩書きは彼には必要なかったんだ。彼に必要だったのは、傍にいてくれる人だけ」

老紳士が椅子から立ち上がる。
どうやら、語りも終盤に差し掛かったようだ。

「その後、シンキは歴史の表舞台にその名を表さない。そう、彼は英雄として生きるのではなく、人として生きると決めたのだから」

英雄――それは自ら名乗るものではなく、誰かがそう祀り上げるもの。
英雄――それは人々にとって都合のいい道具
英雄――それは生贄に他ならない

けれど、人はそれには縛られない。
自ら道を選び、自ら進んでいける。自らの望む速さで。

「シンキは自覚していた。自分は英雄と呼ばれるような存在ではないことにね。だから、その栄誉を捨てた。きっと、そのことに激昂したものもいることだろう。しかし……しかしだ、誰が彼の生き方を否定することができる? 誰が、彼の生き方を蔑むことができる?」

いいや、それはできないだろう。
人生はその人のものだ。そこに、他者の意志が介入してはならない。
介入してしまえば、それこそ唾棄すべきものだ。

「だから私は、彼の生き方を祝福しよう」

老紳士が右手を天高く掲げ、語る。
演出過多な気もするが、多めに見てあげるとしよう。

「さて、王国から姿を消した彼らについてだが、それは幸せだったそうだ。人として普通に暮らし、互いを支え、愛し、子も授かった。きっと200年以上経った今でも、彼らの血筋はどこかにいることだろう」

存在するなら、その子孫もまた人として生きているはず。
表には出さずとも、先代より受け継いできた魂の輝きを失わず、ただ己が望みのために生きる者たち。
英雄というものに固執せず、自らの生き方を突き進む者たち。

きっと、もしかしたら、その者たちもまた歴史に名を表すかもしれない。


* * * * * * *

しばらくして……

「駄目ね、これは。やっぱり不良品だったみたい」

少女が一人、安楽椅子に座って動かなくなった老紳士の人形を見てつぶやいた。
どこかから流れてきたもので、ひとりでに物語を語る人形として興味深かったので買ってみたのだが、その実、一度、語ってしまったら壊れてしまった。
また失敗したな、と思う。

「でも、いっか……面白い話も聞けたしね」

この人形が語った物語はなかなか面白かった。
英雄になりながら、英雄であることを望まなかった青年。
たった一人の、愛する人の傍にいることこそを望んだ青年。
人形が一瞬だけ垣間見せてくれた幻影も、悪くはなかった。

惜しむらくは、これが少女にとってはお伽話に他ならないこと。
この青年の物語は、この世界には存在しないもの。
けれど、確実にどこか別世界には存在する物語。
そう考えると、とても面白い。

だから、考えられずにはいられない。

「英雄であることを望まなかった者たちの、子孫の物語か。それも面白そうだよね」



* * * * * * * *

あとがきのようなもの

長い……!

自分で書いておいてなんですが、そう思わずにいられませんでした。
ちなみに、文法とかは気にせずに書いてたりしてたので、結構めちゃくちゃ。
まぁ、そこは思いつき作品なので許してくれ。


とりあえず、シンキとリーゼが本篇のあとどうしたのかというもの。
今更になって登場。
え、本家と食い違いが起こったら……私は謝(なぞの力が作用した)

でも、これに関してはずっと考えてたことだしね。
本当はもっとちゃんとしたもので出したかったけど、無理と判断し、こんな形に。

あ、最後の少女についてはお気にせずに。
どこかの世界の、どこかの少女ですから。



さて、最後まで読んでくださった方、ありがとう。
こんな駄作に付き合ってくれて。

ちなみに、英雄否定は「ワイルドアームズ2」の影響です。
プレイしたのは中学時代なのですが、未だに強く心に残ってます。

「英雄はいないんじゃない、いらないんだ」

主人公が最終決戦を前に口にするこの台詞。
このゲームのテーマをそのまんま表わした一言。

でも、シンキはそんな考えを持ってるわけなく、
彼は単純に「英雄なんて自分には似合わない」という思いから、英雄否定をしてます。

そういうわけです。

じゃあ、今度こそ、こんな駄作に付き合ってくれてありがとう。
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コメント
この記事へのコメント
 WA2の英雄云々の話は、俺も好きだよー。いいよね、あのシーン(`・ω・´)

 俺も刺激受けたので、後日談がんばろっと。
2009/06/08(Mon) 23:36 | URL  | カルディア #JalddpaA[ 編集]
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